第1章 第十九話
【それでも世界は回っている -OZ-】 第1章「目覚めの草原」 第19話「覚醒、土の鼓動」 【前半:名を喰う風、クロ婆の崩壊】 ──その時、風は吹いていなかった。 けれど、空気がざわめいた。 「……あたし……な、なんて……」 クロ婆の呟きは、どこか遠くから聞こえてくるようだった。 音はあるのに、意味だけが抜け落ちている。 彼女の瞳はうつろに泳ぎ、焦点が...
2025-05-30 01:33:26 +0000 UTC View Post
【それでも世界は回っている -OZ-】 第1章「目覚めの草原」 第19話「覚醒、土の鼓動」 【前半:名を喰う風、クロ婆の崩壊】 ──その時、風は吹いていなかった。 けれど、空気がざわめいた。 「……あたし……な、なんて……」 クロ婆の呟きは、どこか遠くから聞こえてくるようだった。 音はあるのに、意味だけが抜け落ちている。 彼女の瞳はうつろに泳ぎ、焦点が...
2025-05-30 01:33:26 +0000 UTC View Post【それでも世界は回っている -OZ-】 第1章「目覚めの草原」 第18話「名前の倉庫、記憶の渦」 ──夜が明けても、村の空気は重かった。 昨日、突如吹いた“風”。 倒れたエンじいの呻き声。 そして──あの言葉。 「“風の魔導師”が……まだ、この村に……」 ドロシーは目を覚ますと同時に、胸の火種がざわつくのを感じていた。 それは熱ではなく、“存...
2025-05-30 01:30:14 +0000 UTC View Post【それでも世界は回っている -OZ-】 第1章「目覚めの草原」 第17話「クロネの村へ」 【前半】 ──丘を越えると、景色が変わった。 遠くに、わずかに立ち上る煙が見えた。 茂みに覆われた谷の間に、石積みの小さな屋根がいくつか並んでいる。 「……あれが、クロネの村?」 「せや。変わっとらん……わいが見た時と同じ姿や」 ラセルの目が懐かしそうに細...
2025-05-30 01:28:09 +0000 UTC View Post第1章「目覚めの草原」 第16話「旅のはじまり、風を背にして」 ──草の音が、静かに揺れていた。 夜が明けきらぬ空の下、焚き火の余熱がまだわずかに残っている。 灰色に冷えた大地の上で、ドロシーは目を覚ました。 火種の明滅は穏やかで、体の奥にあった熱も、だいぶ引いている。 頭の中もずいぶんとすっきりしていた。 ラセルの上着が、自分の体にかけられ...
2025-05-27 13:43:16 +0000 UTC View Post【それでも世界は回っている -OZ-】 第1章「目覚めの草原」 第15話「夢、風の向こうに」 ──風が、止んでいた。 土は静かに呼吸し、崩れかけた祠の空気はどこか神聖で、ひとときの静けさを与えていた。 その中心に、ドロシーはいた。 ぐったりとした身体は、ラセルの腕にすっぽりと収まっていた。 毛並みの柔らかい首筋から、火種の微かな光がまだ残って...
2025-05-27 13:31:24 +0000 UTC View Post【それでも世界は回っている -OZ-】 第1章「目覚めの草原」 第14話「風は祠に囁き、力は咆哮する」 【第1部】 「……ドロシーちゃん、ちょっとええか?」 草の道を抜けて丘を登る途中、ラセルが急に立ち止まって言った。 その声は、ふだんののんびりとした響きではなく、微かに張りつめていた。 「なんだか……胸のあたり、変にざわざわしてへん?」 ドロシ...
2025-05-27 13:29:33 +0000 UTC View Post【それでも世界は回っている -OZ-】 第1章「目覚めの草原」 第13話「狸の道連れ、ぬくもりの風」 「はぁ……ほんまに、よう晴れとるわ」 草原の丘の上で、狸獣人のラセルが大きく息を吐いた。 太陽はすでに空の真ん中に近く、風は柔らかく、空気は温かい。 「なぁドロシーちゃん、ちょいと休もか。お昼にちょうどええ時間やし」 「うん、ありがとう」 二人...
2025-05-27 13:17:52 +0000 UTC View Post【それでも世界は回っている -OZ-】 第1章「目覚めの草原」 第12話「夜の境界、朝の迷い」 夜が明けかけた草原は、まるで夢の境界線のようだった。 風が止み、草の音すら聞こえない静けさがあった。 ぼくは草の窪みにうずくまったまま、昨日の出来事を反芻していた。 風に、名前を奪われかけた。 世界に、自分が“いる”ということすら怪しくなった。 でも...
2025-05-27 13:16:33 +0000 UTC View Post【それでも世界は回っている -OZ-】 第1章「目覚めの草原」 第11話「名前を忘れる風の中で」 草が、音もなく揺れていた。 風は、一定のリズムで吹いているわけじゃなかった。 あるときは前から、またあるときは真上から── まるで意志を持っているかのように、ぼくの周りを回っていた。 「……やっぱり、変だ」 カイルのくれた地図を手に、ぼくは草原を進...
2025-05-27 13:09:02 +0000 UTC View Post【それでも世界は回っている -OZ-】 第1章「目覚めの草原」 第十話「クネロの村と、灯を継ぐもの」 【第一部:風の外側、クネロの村】 丘を越えた先──草の切れ目から、ぽっかりと空が開けていた。 そこには、静かに朽ちかけた石の門がひとつ、ぽつんと立っていた。 歪んだ門柱に、苔と蔦が絡みついている。だけど、それでも不思議なことに、“ここが入口...
2025-05-27 13:07:42 +0000 UTC View Post『それでも世界は回っている -OZ-』 第1章「目覚めの草原」 第九話 第九話「風の名を持つもの」 ⸻ クネロの村を目指して歩いていたはずなのに、いつのまにか道がわからなくなっていた。 いや、最初から道なんてなかった。 地図の切れ端に描かれていた、点線のルートは、草に埋もれてもう見えなくなっていた。 「……これで、合ってると思うんだけどな……」 ...
2025-05-27 12:16:21 +0000 UTC View Post『それでも世界は回っている -OZ-』第1章「目覚めの草原」 第八話 ⸻ 第八話「それでも、前に進まなきゃいけないから」 ⸻ 朝。 目を覚ましたぼくの隣に、彼の姿はなかった。 代わりに、焚き火の横にひとつだけ、焼いた実が置いてあった。 まだ温かさが残ってる。だから、きっとさっきまでここにいたんだと思う。 「……」 静かだった。 風の音も、鳥の声も...
2025-05-27 12:15:38 +0000 UTC View Post『それでも世界は回っている -OZ-』第1章「目覚めの草原」 第七話 ⸻ 第七話「忘れる前に、君の肌を覚えたい」 ⸻ 火はすっかり弱くなっていた。 外は静かで、風の音もやわらかい。 小さな石の家の中、トカゲ獣人の彼と、ぼくは隣り合って横になっていた。 最初は少し離れていたはずなのに── 気づいたら、彼の腕がぼくの背中にまわっていた。 「ごめん。寒...
2025-05-27 08:58:16 +0000 UTC View Post『それでも世界は回っている -OZ-』第1章「目覚めの草原」 第六話 ⸻ 第六話「君のことは忘れてしまうけど、今はすごく覚えてる」 ⸻ その夜、ぼくはトカゲ獣人の青年の家に泊めてもらうことになった。 といっても、“家”というほど立派なものじゃない。 石壁と布の屋根があるだけ。でも、風を防げて、横になれる場所があるだけで、十分だった。 火を焚くと...
2025-05-27 08:56:37 +0000 UTC View Postそれでは『それでも世界は回っている -OZ-』 第1章「目覚めの草原」 ⸻ 第五話「誰かの靴音が聞こえた気がした」 ⸻ 草の踏みならされた跡をたどって、ぼくは草原を進んでいた。 耳を澄ますと、遠くで風が木をゆらすような音がする。あれは……森だろうか? その前に、目に入ったのは──石造りの平たい構造物だった。 「建物……かな?」 腰くらいの高さの...
2025-05-27 08:54:57 +0000 UTC View Post第1章「目覚めの草原」 ⸻ 第四話「踏まれた道」 朝の光は、思ったよりもやわらかかった。 ドロシーは目を覚ますと、少しだけ伸びをして空を見上げた。 身体が冷えていたせいか、肩に掛けていた布がくしゃくしゃになっていた。 草の香りが濃く、風の音も朝は静かだ。 「……夢……だったのかな」 夜の夢──あの黒い羽根の男。 はっきりとは覚...
2025-05-27 08:54:02 +0000 UTC View Post第1章「目覚めの草原」 ⸻ 第3話「夜の音」 日が傾き始めると、草原の色が黄金から深いオレンジへと変わった。 足元の草が風に揺れるたび、さらさらと乾いた音を立てる。 「夜……か」 ドロシーはため息をつき、空を見上げた。 雲のない空に、星がぽつりと灯る。 身を隠すような場所もなく、ドロシーは丘の下の木陰に腰を下ろした。 体温の下...
2025-05-27 08:53:06 +0000 UTC View Post第1章 目覚めの草原 第二話「静かな丘の看板」 草原を歩くと、風が毛並みに絡んだ。 どこまでも続く金色の大地は、見渡す限り生き物の気配がない。 ──それでも、進まなきゃ。 足元の石を踏むたび、カチャ、と音が鳴る。 イタチ獣人のドロシーは、耳を伏せながらそっと歩みを進めた。 すると、丘の上に何かが立っているのが見えた。 近づい...
2025-05-27 08:51:40 +0000 UTC View Post第1話「目覚めの草原」 ──ざわざわ。 風が草を撫でる音で、ドロシーは目を覚ました。 見上げた空は、どこまでも青かった。けれど、何かが違う。空気の色、風の匂い──全部が、ほんの少しだけ現実離れしている。 「……ここ、どこ?」 イタチの獣人であるドロシーの耳がぴくりと動く。 背中に感じる土の冷たさ、手のひらにまとわりつく草の感...
2025-05-27 08:48:04 +0000 UTC View Post